スマートフォンを子どもに持たせるメリット、デメリットは? 実際に親に聞いてみた
スマートフォン端末が普及しきった現代日本。インターネットをはじめとする通信技術を用いたコミュニケーションが、日々容易なものとなってきています。
それに比例して、未成年のスマートフォン利用も年々増加しています。経産省の調査によると、2014年10月の時点で高校生のスマートフォン保有者は高校生全体の88.1%ともいわれ、今後ますますスマートフォン利用者の低年齢化や、所有比率の増加は続きそうです。
しかしながらスマホが普及していく一方で、高校生を含めた子どものインターネット利用時間の増加による「ネット中毒」や「LINEいじめ」など、新しいコミュニケーション・ツールが生んだ、新たな問題が表面化してきたことも見過ごせません。しかし、使い方さえ間違えなければスマートフォンやインターネット、多様なアプリケーションといった道具は非常に便利で、多くの物事や知識にアクセスすることができるかつてない発明だともいえます。
今回の記事では、子どもにスマートフォンを持たせている父親・永吉亮史さんへ特別インタビューを敢行。これからスマートフォンを持たせようと考えている方、もしくは持たせたくないと考える方、永吉さんの経験談をご一読いただければと思います。彼はどのように子どもとスマートフォンの関係をつくっているのか。きっとなにかヒントが見つかるはずです。
スマートフォンを与えているけど、通話はできない
──この度はインタビューをお引き受け下さりありがとうございます。永吉さんはいまは何人のお子さんがいらっしゃるのでしょうか?
永吉 長女10歳、長男8歳、次男1歳の三人姉弟です。いまは長女に、もともと母親が使っていたXperiaのacroを使わせています。次男はまだ1歳なのでスマートフォンはさすがに使えるはずもありませんが、長男にもまだ早いような気がして、渡していません。
──上の子にスマートフォンを与えたのは何歳頃のことでしたか?
永吉 小学2年生の頃だったので7歳くらいですね。妻が2年ほど前に機種交換をしまして、そのタイミングで、使わなくなった方の端末を渡しました。ただ、僕らが子どもに渡しているスマートフォンは通話ができないようになっています。
──電話利用が目的ではないということでしょうか? それには何か理由があるのでしょうか?
永吉 まず、子どもにスマートフォンを渡した理由の一つとして、「子どもが欲しがった」という理由ももちろんありますが、僕には「古い端末を有効利用したい」という気持ちがありました。けれど、いま子どもに使わせているacroだとキャリア契約しなくちゃ通話が使えないので ……。本音を言うと、お金を払ってまで子どもに与えるものではないかな、と。それに、これは家庭にもよりますが、うちの場合だと、仮にSIMを差したとしても、通話が必要な場面が思いつかなかったんです。
──いわゆる子ども向け携帯だと、両親などの決まった人との通話はできる、けれどアプリに制限がある、という機種やプランが思い当たります。
永吉 あんまり外で遊んだりもしないような子なので、今のところそういったプランが必要な場面は本当に少ないです。通信機器としての使い道は──メールもしないですね。LINEはアカウントをつくるときに電話番号が必要になってしまうので、渡している端末ではLINEは使えないんです。けれど、Skypeはもともと入っていて、それで連絡とることはありますね。でも基本的に家の中の無線LANでしかインターネットに接続できないので、小さなやりとりに使う程度ですね。
不安はないけど、子どもの性質が重要
──なるほど。どうしてお子さんはスマートフォンを欲しがったのでしょうか?
永吉 その時も「どうしてもスマートフォンがほしい!」という感じではなかったんです。母親のスマートフォンに入っているアプリで遊びたい、という感じで時々つかっていたんですが、母親はというと、「ふだん使っているスマートフォンをあんまりべたべた触られたくない」というのが正直な気持ちだったようで(笑)。それで、古くなった端末だったら自由に使っていいよ、ということで与えた程度なんです。
──子どもにスマートフォンを与えるとき、利用方法などで不安はありませんでしたか?
永吉 それが、実はあまりなくて。逆にまだ子どもが小さすぎて、そこまで悪いことは思いつかないし、しないだろうと思っていました。あとは、厳格に使用する際のルールを決めているわけではないのですが、基本的に家の中でしか使わせていないので、何をやっているのかも、見通すことができます。僕が把握している用途としては、基本的にはYouTubeを見ているか、無料のアプリゲームで遊んでいる感じですね。YouTubeでは主にお笑い芸人の動画とか、YouTuber系のコンテンツ、リズムネタなんかが好きみたいです(笑)。お笑いのアンテナはすごくて、テレビに僕の知らない芸人が出てきても子どものほうが詳しくなったりしています。
──特に叱ったりすることがなくても、外に持ち出したりしないのはなぜでしょう?
永吉 子どもの性質にもよると思うんですけどね。良くいえば固執しなくて、悪くいえば飽きっぽいともいえるんですが。スマートフォンがないとダメとか、ゲームがないとダメとか、依存している感じがない。その場その場に合わせて楽しんでるんだな、という感じがします。ただ、3DSなどの携帯ゲーム機は外に持ち出す時はしっかりと許可制にしているので、それと同じように思っているのかもしれないですね。
でも、真ん中の子は要注意だと思っていて。ゲームをやりだすと熱中するので……同じ環境で同じしつけをしているはずなので、やっぱり子どもの性質というのは大きいです。
スマートフォン利用で開ける、子どもの可能性
──子どもにスマートフォンを渡すときに、こういう風に使ってほしい、と期待することはありましたか?
永吉 実は一つだけあります(笑)。小さい子どもに限らず、学校で勉強したことや遊びで知ることでも、わからないことを調べることってあると思うんです。単語がわからなければ辞書をひけばいいし、Googleで検索してもいい。日々成長していく中で、いろんな事に興味がでてきて、何か知らないことに遭遇したときに「自分で調べる」という癖を身につけてほしいと思っています。インターネットの良いところは多くあると思いますが、中でも、すぐに何でも調べられることは重要。
知識を増やすことに関しては、昔よりも圧倒的に容易になっていると思うので、そういう能力を早いうちから体得できているのは、本人にとって良いことだろうなと思いますね。
──自分で知識欲や学習意欲を満たせるということですね。ただ、知りすぎるということに関しては心配ではないですか?
永吉 実はあんまりなくて。僕はインターネットに上がっている情報で、本当に見てはいけない情報ってないと思っています。まあ、年齢的に刺激の強いものとかあるとは思いますが──例えばアダルトサイトとか(笑)。でも、なんだろうな……自分が小さいときにも刺激の強い世界っていうのは確かにあって、それは何か生活の中で感じ取ってはいたんですね。そういう世界ってインターネットとは関係なしに、ふつうに暮らしていても、フィルタリングしていたとしても、触れたりすることはあると思うんです。そういう世界が存在していることも徐々に知っていかないと、大人になれないですもんね。
自分の取り入れる情報とかも「これは嘘だな」とか判断できるようにならないといけない。もちろん、最初のうちは全部鵜呑みにしてしまうと思うんですが、どこかで失敗してでも、自分で正しいか正しくないかを咀嚼できる力を身につけて欲しい。そんなふうにインターネットを活用できる力やリテラシーを鍛えるためにも、まず最初の第一歩としてスマートフォンというのは有効かなと考えています。
──ちなみにインターネットのフィルタリングについてはどう思われますか?
永吉 18歳未満の子どもがインターネットを利用する際には義務づけられていますよね。必要か不要かという話ですと、必要だとは思います。やや矛盾した話になってしまいますが、世の中にどんな情報や世界があるかという事は、知っておいていいと思う。知ったうえで、まだ見てはいけないものだ、ということも把握しておくべき。ただ、何があるかわからない、なんで閲覧できないのか、その理由もわからずに見れていないというのは、少し違うかなという気はします。ただ、15、16歳になると、頭も良くなるんで、自らフィルタリングなんて解除しちゃうんじゃないかな? という気はしますよね(笑)。そのへんはいたちごっこになりそうだなあ。
物事には順序があって、親なり学校なりが、こういう情報があるよ、と子どもに世の中のいろいろなことを正しくインストールしていかなくてはいけない。いきなりハードなことは教えませんけど、物事の調べ方とか、いろんな領域の情報を少しづつ与えていければと思っていますね。
子どもが利用している中で、まだ実際に怖い思いをしたことはないので、特に閲覧履歴を覗いたりもしていません。信頼しているからというわけではなく、普段から子どもと接している中で「あ、こいつ、なんか変なの見たな」というのは行動でわかるからです。
──監視などはされてないということですが、子どもにスマートフォンを持たせる場合に、こんなアプリがあったらいいなとか、こんな端末があったらいいなと思ったりすることはありますか?
永吉 この先は既存の三大キャリアだけでなく、いろんな会社が独自性の高いSIMを展開していくのだろうなとは思っています。例えば、子どもの場合は使い放題ではなく、逆に上限があったほうが良いなとは思っているんです。お金の心配という部分もありますが、まだ物事の分別のついていない、好奇心のブレーキがきかない子どもに容量使い放題は少しリスクが高い気がしますね。例えば1日100MBとか。動画をみるにはつらいですが、それは家の回線でみれますし。そういう意味でも、So-netのモバイルサービスは子どもが使うにも適しているかもしれませんね。
端末に関していえば、特に希望はなくて、子どもの場合はそんなにハイスペックマシンはいらないかなと思います。
入れておきたいアプリケーションとしては、遊びだけを目的にするのではなくて、多少は勉強でも使えるものがあるといいですよね。辞書系のアプリはそうですけど、敷居の低い教育系のコンテンツとか。そういうものがあれば、自然とデジタルの世界に入ってこれるのかなと思いますね。あとは、クリエイティブなことに使わせてあげると面白いかもしれません。絵を描いたり、写真を撮ったり。色の組み合わせで遊べるミニゲームとか。アプリの数はかなり増えているので、子どもに与えるときに、親のほうであらかじめ使わせたいアプリをインストールして渡せばいいし、入っていれば興味を持って勝手にやってくれると思いますよ。
──周りのご家庭を見ていると、どうですか? 小学生にスマートフォンを持たせることは、すでに当たり前の状況になっているのでしょうか。
永吉 いやー……4年生くらいだとまだ少数派だと思います。「あんしんケータイ」のような特定の人にしか連絡できない端末を持たせて塾や習い事に行かせたりとかはあるみたいですね。うちではあれを持たせるくらいなら送り迎えしたほうが良いと思っています。
でも、やはり子どもの世界では「◯◯ちゃんがスマートフォンを持っている」というのは羨ましいみたいです。でもうちは必要ないよ、という話をすればそこで終わる問題です。
塾や習い事などで、親の目が届かない範囲でスマートフォンを持って遊ぶような子は、しつけができていない気がします。だからそこに合わせる必要はないのかな、と考えています。
──子ども間でのスマートフォン利用での問題といえば、「ネットいじめ」のようなSNS内でのいじめや嫌がらせが大きく報道されることがあります。そういった風潮は心配ではありませんか?
永吉 ネットでのいじめというのは、僕も経験したことがないことで、正直リアリティがありません。もし自分や子どもが遭遇した時に、どんな気持ちになるのかは正直わからないですね。でもどんな子でも、いじめとまではいかなくとも、友人らからのいじわるを経験したことのない子はいないと思うんです。いじめじゃなくても、悔しい思いをさせられたとか。そういう時に、自分の力で環境や雰囲気を変えたというのは大事な経験だと思います。
──「ネットいじめ」の特徴でよく言われることが、大人が気付きにくいということです。学校などのみんなの目が触れる公共の場ではなく、端末の中で起きる話なので。
永吉 仮に何かあった場合、気づくのはたしかに難しいですよね。生活の中での態度の変容、細かなところを見るしかない。親に言いにくい、という気持ちも出てくると思う。でもそこは諦めずに、親と子どもの信頼関係を日頃から構築していくしかないと思っています。
──逆にそういう状況になってしまったときに、解決する力を持つためにも、早めににスマートフォンに限らず、デジタル機器やインターネットに触れることでリテラシーを高めておくことは大事なのかもしれませんね。
永吉 そうですね。一つ思うのは、早めに触れて、早めに飽きて欲しいという感じはしますね(笑)。ある程度、のめり込んで使う時期というのはあると思うのですが、それを過ぎて、当たり前のものになってしまえばいい。とりあえずLINEがきたら返せばいいや、とか。興味が一周して、スマートフォンなんてその程度のものなんだ、となって欲しいなと思いますね。
──普段からネットの使い方などは教えたりしていますか?
永吉 いや、特に教えてはいません。と言うよりも自分で覚えていくのが本当に早くて驚きます。先ほども言いましたが、小学生はお笑い系が本当に好きみたいで、そのジャンルのリサーチ力はすごいです。危なそうなものは見ていませんが、際どいものって一見してもわからないですよね。例えばゲームの実況動画を見ていて、年齢制限のある「GTA」に行き当たったりするとまずいなとは思います(笑)。でもそれはインターネットの話じゃなくても起こることで、自宅で僕が「GTA」をプレイしているときに、いきなり子どもが「パパ電話だよー」って部屋に入ってきたことがあって(笑)。完全に性や暴力で溢れていますからねあのゲームは……。家庭内のフィルタリングにも気を遣わないといけませんね。
──(笑)。いまはインターネットの利用にフィルタリングをかけないといけなかったり、契約していないから通話ができなかったり、制限が多くありますが、親として、何歳くらいになったら全部開放していいかな? と思えるでしょうか。現在、男子高校生の8割がスマホ、女子高校生の9割がスマートフォンを持っているというデータもあります。
永吉 それは多いですね。うーん……。子どもが自分でスマートフォンにお金を払えるようになってからじゃないですかね。
──けっこう遅いですね! 渡すのは早かったのに。
永吉 スマートフォンやインターネットが何なのか、何ができるのかということは早めに知っておいたほうが良いとは思います。けれど、要るか要らないかで言うと、子どもたちが通信することによって親の僕らが得をすることはあまりなくて。だからそこにお金を払うつもりはないんです。実際に欲しい、と言われた時にまた考えるとは思うんですが。いまは子どももそこまで強く欲しいとは思っていない。その時に改めてメリット/デメリットはしっかりと考えてみたいと思います。
──子どもがスマートフォンやパソコン、インターネットに触れることで、どういう風に育ってほしいという希望はありますか?
永吉 デジタルに詳しくなることはもちろんですが、デジタルを使った新しいものを生み出してほしいなという気持ちはあります。Windows95から、大衆にも「インターネットっていいよね」という感覚が広まってきて、すでに多くの便利なサービスやこれまでなかった文化が登場している。当時から考えると、信じられないくらいにデジタルの世界は加速度的に増加したと思うのですが。今後どういう風に、新しい世界を子どもたちが思いつくのかを、見てみたいですね。まあそれは別にうちの子どもじゃなくてもいいんですが(笑)。うちの子はそんなに(笑)。
スマートフォンを渡したのは「自然な流れ」
──これまでのお話からうかがうに、本当に真面目に、教育的な理由で渡しただけでもなさそうですよね。
永吉 そうですね。そんなに深くは考えていなくて、単純にそこに使っていないスマートフォンがあったからなんですよね。それは自然な流れだったんだと思います。いま僕が持っているスマートフォンにしても、実は端末代だけで50,000円とかする高級品じゃないですか。そんな高いものを1〜2年ほどの周期で買い換えるなんてこと、歴史を遡っても、これまでに無いことだと思うんですよ。5年〜6年は使わないともとが取れないって感覚だったと思う。でもそんな高価な、50,000円とか60,000円もしたものを、とてもそう思っていないような感覚で、すごく雑に扱ったりしますよね。でもスマートフォンってそんなぞんざいに扱っていいものじゃないと思うんです。それを2年ごとに買い換えて買い換えて…というサイクルになっている。それを最も有効に活用する方法というのが、子どもに与えることだったんだなと思いますね。
──まだ答えは出てこないかもしれないんですが、子どもにスマートフォンを与えて良かったと思いますか?
永吉 まだわからないです。良かったこともそうですが、失敗したと思うことも両方。結局はゲーム機とかと変わらない気がしています。ゲーム機自体も、早いと幼稚園くらいのときから3DSをやっている子がいるらしいのですが、うちはそこが遅くて。一昨年に買ってあげたんです。
そこも一長一短あると思って、それが例えゲームであっても、何かを集中して極めるという経験は悪いことではありません。上手くなるという向上心や成功の体験を子どものころから知るのは大事です。ゲーム内のレベルを上げるとか、ランキングの順位を上げるとか、それは良い体験だと思います。その子が得意なのがゲームなのか勉強なのか、それも向き不向きだと思うんです。中にはゲームも勉強も中途半端な、何も集中できない子もいるだろうし、それが一番良くない。とりあえずゲームに集中できるのであれば、時間だけしっかり決めて、ゲームを頑張って、そこから次は勉強をやらせたり。それはスマートフォンを触ることも同じだと思うんですよね。
──スマートフォンを子どもに持たせるか持たせないか、まさに今、悩んでいる家庭も多いと思うんです。そういう人たちに何かアドバイスはありますか?
永吉 「持たせたらこんなに良いことがありますよ!」ということはないんです(笑)。一つ言えるのは「悪いことばかりではない」ということ。スマートフォンなりパソコンを持つことで、子どもにどんな変化が起きるのかというのは、持たせてみないとわからないし、与えた上で、変な言葉覚えだしたぞ(笑)とか、そういうことは当然あると思いますが。
さっきも言ったように子どもの資質による部分が大きいです。悪い影響を受けやすくて、そっちに流されてしまう子は、そのきっかけがスマートフォンじゃなくても、なんだって悪い方向に流されてしまいがちだと思う。ゲームやテレビもそうだろうし、友達関係からだって子どもは良いことも悪いことも学びますしね。同じように悪くならない子もいて、何を持っても平気で、何が正しくて大切なのか、自分の中で取捨選択をするので、あまり過敏にならなくてもいいと思います。
それに親が補正することで、子どもの弱い部分を補完していくこともできる。子どもの性質といっても、子どもの行動だけに任せて、放置しておけばいいという話ではありません。親と子どもで、一緒に良い使い方を探っていけばいい。そう考えています。そんな感じで、いくらでも上手く使わせるやり方はあるんじゃないかな、という気はしますね。
──なるほど! 本日はありがとうございました。
永吉亮史(ながよし・あきふみ)
ソネット株式会社ではデータ解析やリサーチを担当。
2015年9月8日 2015年9月8日
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