左から、千田さん、岡部さん、大村さん
最近、耳にする機会も多い「MVNO(エムブイエヌオー)」サービス。いわゆる“格安スマホ”と呼ばれるこのサービスは、docomo、au、SoftBankといった大手通信キャリアのネットワークを借りることで、月額利用料金の低価格化を実現しています。
今年5月には、SIMロック解除の義務化がスタートし、さらに端末の縛りが軽減。他の事業者の回線サービスが利用しやすくなったことで、MVNOへの注目度も増しています。
とはいえ、まだまだわからないことも多いサービスであることも事実。そこで今回は、実際にふつうの携帯電話サービスからMVNOへ乗り換えた3人に、MVNOのメリットや、乗り換え前後でのギャップなど、実際に使ってみたからこそわかるアレコレをSo-netの会議室でお聞きしました。
参加者
千田(ハイジ・インターフェイス株式会社所属)
「So-netのモバイルサービス」のサイト設計、デザインを担当
岡部(ソネット株式会社所属)
NURO・モバイル商材のマーケティングやプロモーションを担当
大村(ソネット株式会社所属)
NURO 光・LTEのキャンペーンの運用や業務改善を担当
月々のケータイ代が半額以下、本当に安いMVNO
――まずは自己紹介も兼ねて、みなさんがお使いの端末・サービスを教えてもらえますか?
千田僕が使っているのは端末がiPhone 6 Plusで、「みおふぉん」(音声通話機能付きSIM)を挿しています。
岡部私は端末がNexus 5で、サービスはY!mobile(ワイモバイル)ですね。
大村端末がXperia J1 Compact、サービスはSo-netです。
千田・岡部おおおぉ!
――みなさんそれぞれ、「格安スマホ」ことMVNOサービスに変更されたということですが、何がきっかけだったんでしょうか?
岡部もうとにかく安くしたかったので、それこそ“格安スマホ”という言葉に釣られるような感じで、2年前に変更しました。
千田当時って、“格安スマホ”という言葉がまだまだ少なかった時代ですよね。アーリーアダプターだなぁ。ちなみに僕は1年前、(岡部さんと)まったく同じ理由でした。安上がりにしたいっていう……(大村さんは)どうでした?
大村私は今年の7月に変えたばかりですね。自分の会社(So-net)に貢献しようと思って(笑)。
岡部・千田正しい(笑)。
大村けれど根本的な理由はみなさんと一緒です。実は2〜3年前まで、ガラケーを使ってたんですよ。友人のスマートフォンを譲り受けてからは、ドコモのSIMを挿して使っていて、料金プランが旧FOMAの「パケ・ホーダイ」のままで(笑)。月々の料金が8,000〜9,000円だったので、これは一度見直そうと思って、7月に思い切って変えました。
――“格安”の言葉通り、やっぱり安さが最大の理由なんですね。実際に使ってみても、料金的なメリットは大きいですか?
大村そうですね、本当に安いんだなって。
千田超安いですよね。僕の場合は、仕事用としても兼用していて、データ通信だけでなく、電話する頻度も多いんです。それでも以前の半額くらい、月5,000円以下です。内訳を見ると、通話代が約4,000円なので、それを除くと1,500〜2,000円以内というのは驚きですね。
大村確かに。私は仕事用の端末が別にあって、プライベートではあまり電話をしないので、すごく安くなりました。だいたい2,000円くらい。
岡部安い! と言いつつ、私も2,500円くらいですね。
千田なんか猛烈に安さを推してる感じになってる(笑)。でも実際、浮いた分のお金で1回飲みに行けるとか、それくらいの感覚はありますよ。
――料金以外に、使ってみたからこそわかるメリットがあれば教えてください。
岡部メリットというか、以前の端末と遜色なく使えるというのが正直な感想ですね。
千田変わらないというのはいいことですよね。例えば、通話の電波も思っていたより良かったです。というか、自分自身の経験として、移動中に通話していれば、必ずどこかで途切れたりしますよね。そのときに、「電波状況が悪いのはMVNOだから」とは思わないんですよ。僕も含めて、だいたいの人が、「ここは電波状況が悪いエリアなのかな」って納得しているんじゃないかと。
大村だから、意外と気にならないってことなのかも。
速度制限に気をつかうからこそ生まれた裏ワザも
――基本的な使用には満足しているということですね。使用前後のギャップという意味で、そのほかに良かった点、もしくは物足りなかった点はありますか?
千田従来のスマートフォンと比べて、動画をあまり見ないとか、通信速度制限には気をつかうようになりましたね。だから、10MBのファイルをメールに添付したり、ビデオ通話をしてくる人がいると、“やめてれくれ!”って(笑)。
岡部わかります(笑)。今は月2GBのプランなんですけど、月末になるともう制限がかかってしまって。家だとWi-Fiを使っているので、すぐになくなるというわけではないんですけど。
千田本当ですか? 僕は6GBですけど、今日(15日目)の時点で残り400MBしかない……あとどうやって乗り切ろうかなって。自宅ではWi-Fiがあるからいいけど、仕事で出張があると、もうどうしようもない(笑)。
大村すごい(笑)。私が使っているのも、月6GBのプランです。2人と違って、自宅にはネット環境がないので、結構使っている意識はあるんですけど、それでも1カ月で5GBくらいですね。でも、3日間しっかり制限を課してくれるので、そこはちょっとストレスかも。
千田外出があると、結構使っちゃいますね。週末はほとんど10MB程度しか使わないんですよ。それだけ家から出ないってことなんですけど……。
大村私も家から出ないことが多いんですけど、土日のほうがケータイを触っている時間が長いですね。ただ、自宅だとネット環境がないので、すぐに制限がかかっちゃいます。だから、以前に比べて、容量を確認できるマイページを見る頻度が増えました。
岡部もう回線制限だけは回避できない(笑)。私も休日は家に引きこもることが多いけど、その場合はWi-Fiにつなげられるから。
大村だから2GBでも大丈夫なんだ。
千田ちょっとネタみたいな話ですけど、YouTubeで動画見るときに、最後まで再生すると「もう1回見る」のボタンが表示されますよね。ただそれをクリックすると、もう1回ゼロから動画を読み込むので、その分容量が必要になるじゃないですか。だから、あと2秒とかで再生終了のタイミングでバーを(最初に)戻すと、余計な通信料を回避できます!
岡部・大村す、すごい……!!
「キャリアメールが使えなくなって、きれいに棚卸しができた」
――それはまさにMVNOに乗り換えたからこその知見ですね。そのほかに、機能やサービス面において感じたギャップはありますか?
岡部これは私の端末がNexus 5だからだと思うんですけど、着信拒否の設定ができなかったんです。必要な人は、Googleストアでアプリをインストールしないといけなくて。
大村そんなに着拒したい相手がいるんですね(笑)
岡部いっぱいいるんですよ! ただ、キャリア公式のアプリじゃないからなのか、インストールしたあとでも、着拒した人から電話がかかってくると一瞬鳴っちゃうんですよ。「“えっ、なんで!?」”って……もう衝撃でした。
千田・大村(笑)
千田僕は留守番電話サービスがなかったのが残念でした。仕事上必要だったので、自分で調べて、留守電がメールに添付されて送られるようにしたんです。でも、メール添付なので、スピーカーから音が出るんですよ。だから、留守電を聞くたびにスピーカー部分を耳に近づけるという(笑)。
岡部シュールな姿……(笑)。
大村個人的にそこまでギャップはないんですけど、あえて言うならキャリアメール(アドレス)がなくなったことですね。ガラケー時代からいろいろなメルマガを登録していたので、それらが全部なくなって、ある意味きれいに棚卸しができたかなと(笑)。最初は違和感を感じましたけど、今はヤフーメールやGmailを使っているので、不便とは感じないですね。
――LINEやMessenger(Facebook)なども広く普及しているので、キャリアメールを使う機会は、意外と少なくなっているのかもしれません。同時に、足りない機能はアプリで補う、というのがスマートフォン以降、主流になっていますね。では、今の話にも通じると思いますが、MVNOサービスにおいて「こんなアプリが欲しい!」というのはありますか?
岡部着拒!
大村もう出なきゃいいじゃん(笑)。
岡部だって、いっぱいかかってくるんだよ!?
千田僕としては仕事の電話もかかってくるので、とりあえず出ちゃいますね。でも、着信拒否のニーズはあるかもしれないですよ。
岡部そうそう。着拒以外だったら、私はガラケーのキャリアメールにメールが送れるアプリが欲しいんですよ。親のガラケーとメールするとき、現状はショートメールしかなくて、それだと文字数が少ないから。
大村そういうアプリはありそうだけどね。
岡部あるんだけど、ちょっとイマイチなものばかりなので、きちんと送れるアプリがあればいいかなって。
千田あとは、通信制限を知らせてくれるとか。
岡部・大村それは欲しい!
千田ただこれは、外部のアプリをインストールするんじゃなくて、契約する会社側が端末にあらかじめ設定してくれているとうれしいなと。
自分から積極的に調べないと、欲しい情報は入手できない
――事業者側が提供してくれるからこその安心感はありますよね。それでは次に、みなさんが今のプランに決めた経緯をうかがいたいと思います。さまざまなサービス(事業者)やプランがあるなかから、どのように選んだのでしょうか?
千田僕が手続きしたのは、ビックカメラにあるBIC SIMカウンターです。そこで契約すると、無料でWi-Fiに接続できるエリアがもらえたり、いろいろな特典があったので。
大村私の機種(Xperia J1 Compact)の場合は、当時はイオンやソニーストアなどWEB以外の販売販路も含めて料金プランが全部で3種類あったので、社内の人に聞いて、各社のページを見て、すごい調べました。正直、端末一括払いで少し高かったんですけど、月々の使用料が安くなるし、乗り換え前の月の利用料を考えると、1年未満でもとが取れるなと。
岡部私が契約した当時は、まだ事業者も今ほど多くはなかったんです。かつ、個人的に実物(端末)をちゃんと触ってから決めたかったので、ワイモバイルの店舗で確認して、これなら大丈夫と思って契約しました。
大村端末は契約後に発送されて、(手続き時は)実物が触れないものが多いですよね。あとはSIMだけ販売されてたり……。
千田端末は会社から支給される……というか、会社にいっぱいあるので(笑)。そこから良さそうなもの選んで、SIMを挿して使っています。実は、iPhone 4s以降、一度も端末を買ったことないんですよ。だから、僕自身、端末に対するこだわりはないですね。
大村端末はずっと会社のなんですね(笑)。
千田はい(笑)。ちなみに、申し込む前に、口コミサイトとか見ませんでした? 僕はいわゆる「“◯◯試してみた」”的なブログを見たり、そういった人の経験談はすごく役に立ったんですけど。
岡部価格比較サイトはすごく見たような気がします。Nexus 5で大丈夫かなって(笑)。
千田サービスじゃなくて端末のほう(笑)。
――乗り換えのタイミングで、一時的にケータイが使えなくなる期間があると思いますが、気になりませんでしたか?
千田ビックカメラの店頭で申し込んだんですけど、MNP(番号ポータビリティ)でも2時間後には使えたので、割とすぐだなって感覚でしたね。
大村私の場合は、今なら即日受け取り出来るんですが、当時は端末が発送されるタイプしかなかったので、3日間使えませんでした。でも、データ通信はWi-Fiでつなげられるし、3日くらいであれば、正直あまり困らなかったです。
千田店頭までとはいかなくても、すぐに端末がもらえて使える、ブースみたいなものが一時的にでもあったらうれしいですよね。
大村そうですね。実際、手続き自体は簡単だったので。
――話を聞いていると、みなさん自ら調べているんですね。MVNOの特性上、ライトユーザーのほうがよりメリットを実感できるようなイメージでしたが、現状では、そういった人たちが気軽に変えられるほど、情報が整理されていないのでしょうか?
千田今の段階では、自分から積極的に調べないと、本当に欲しい情報は入手できない気がします。本当に各社から様々なサービスがでているので、何が自分に合っているのか、わからないと思うんですよね。職業柄、僕たちは割と知識があるほうだと思いますけど、慣れていない人にとっては、ちょっと大変かもしれません。
大村人に直接相談できるのが一番いいんですけどね。私もプランを決めるときは、6GBか12GBかですごく悩んだので。もしくは手続きを代行してくれるとか。
岡部それがあると本当にありがたい! 私は実家の親用にBIC SIMを買ったんです。でも、「親にSIMカードが届くから設定してね」と言っても、絶対にわからないだろうから、私が東京でSIMを買って、即日開通して、設定して、そしてそれを山奥の実家に届けるという(笑)。
心もカラダも“端末”も、スッキリして始まる新スマホライフ
――MVNO自体がもう少し普及していくと、そういった状況も変わってくるかもしれません。今、乗り換えを検討している人たちのためにも、みなさんのコメントが大事になってきそうです!
一同えっ!?(笑)。
千田調べるのはちょっと手間かもしれないけど、手続き自体は意外と簡単にできました。ただ、着信拒否設定の話に限らず、自分が必要としているサービスに関しては、乗り換え後も継続可能かどうか、事前に調べたほうがいいですよね。
岡部なんとなくのイメージで“面倒、わかりづらい”と感じて、その先に進めない人が多いと思うんです。それでも、月5,000円以上安くなるのは大きいから、乗り換えた人はその良さを実感していて、“なんで変えないの?”って。そう言ってくれる人が周囲に増えてくれば、もっとハードルが低くなるんだろうけど。
大村携帯電話代って、必要経費みたいな感じで、自分がどれくらい払っているか意識してない人が多いんじゃないかと。カード払いだと、なおさら払っている感覚がないというか、気づきにくい。私も改めて見直して、「こんなに安くなる」ことを認識してからは、乗り換えない理由はなかったですね。
千田いろいろ調べたり、乗り換え前はちょっと大変かもしれないけど、乗り換えてみると、冗談抜きで実際ほとんどメリットしかない。
大村だから、最後はもう勢いですね。「この連休に乗り換えよう!」って。
千田“棚卸し”の話にも通じますけど、僕も速度制限に気をつかうようになったことで、ソーシャルゲームやらなくなって、そういうアプリも削除したりして、本当に必要なものだけ残った感じです。そういう意味では、スッキリした気持ちで新たなスマホライフを始められましたね。
岡部着拒機能はないけど(笑)。
千田そこは今後のサービスに期待ということで(笑)。